本当はいつだって笑っていたい。





 Smiling 





いつだって笑っていられるなら、きっとそれがいちばん幸せなんだろうね。





帰り道に手をつないだまま彼女は少しだけ笑ってそう言った。
つないだ手と手はひどく暖かくって、それなのにその言葉はどこか冷たくて、
僕はその温度差にわずかに怯んでしまった。
僕の動揺を見てとったのか、彼女は少しだけ困ったような顔をした。

「だって、笑う余裕があるのはいいことだわ」

そう言ってまた少し笑った彼女の声はいつものあたたかさを取り戻していて、僕は内心ほっとした。
思ってもいなかったことを持ち出されたことに動揺したのだろう。
そう自分に言いきかせることで、僕はなんとか自分を取り戻した。
結局そのままその話は流れてしまって、その後話題にのぼることもなかった。
その彼女ともとうの昔に別れてしまって、今はどうしているのか知るよしもない。





けれど彼女がそのときに言ったひとことは、僕の心に引っかかって今もなお消えないでいる。
それは、白い画用紙に落ちた青い絵の具。湖に落ちた一枚の葉。
ごくわずかでも鮮やかにその姿を主張するのに、普段は静かに身をひそめている。
そうして、日常のふとした瞬間に思い出されるのだ。
あの、温度差をともなって。





そう。
いつだって笑っていられるのなら、それが一番いいのだろう。
笑えるということはすなわち、それだけ余裕があるということなのだろうから。
そんなことを取りとめもなく考える。
頬をなでる風が涼しくて、ほんの少しだけ頬をゆるめた。
いくら残暑厳しいといっても、日が落ちる頃には暑さはだいぶ和らいでいる。
ひとけのない公園はその分風通しがよさそうだ。
唐突にぱたぱたと軽い足音がして、小学校低学年くらいの子どもたちが前を走り抜けていく。
高い声で笑いながら走ってゆくその後姿。
僕はいつからあんなふうに笑わなくなったのだろう。
思い出そうとしたけれど、思い出せなかった。





サヨナラしてから触れた、きみのこころ。




















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後味の悪い話。(笑)
BGMはGLAYの「Blue Jean」。
雰囲気は違うんですが(笑)

♪波打ち際を駆ける子どもたちのむれ 二人にもこんな時があったはずなのに

って歌詞でふと。ええ、ふと。
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