貴方を抱いた腕で、私は。





「 べに 」





黒い髪を結い上げて、赤い赤い紅差して、私は今夜も春を売る。





豪奢に飾り付けられた髪と、美しく鮮やかな着物。
きらきらと薄暗い明かりを弾くそれを、目の前にいる男は満足そうな目で見ている。
それは、値踏みをする目。
男は買い手。私は商品。
その方式は、私がここを出るまで続く。

今日も知らない男が私を抱いて。
貴方の温もりは少しずつ奪われていく。
触れる手のひら、重なる唇。
似ても似つかないそれに、無理矢理貴方を重ね合わせて。
こうして私は夜を明かす。
頭の中で貴方に抱かれ、知らない男に身体を抱かれ。
幾つの夜を明かしたでしょう。





「何と因果なこと」

貴方と身体を重ねるたびに、身も世もなく泣き伏してしまう。
心底惚れた男がいながら、毎夜他の男に抱かれるこの身の厭わしさ。

「お前が好きだ」

貴方がそう言う度に、その優しさに泣きたくなる。
貴方に抱かれたこの身は、明日には違う男の腕の中にいる。
金で買われた、この身体は。
髪をほどいて、身体を重ねて、何度言葉を交わしても。
貴方だけのものになることは出来ない。
厭わしい、この身体。
だから、

「心は、貴方のものです」

心だけは。
この言葉に、貴方は心底嬉しそうに笑うから。
そして、

「身請けしてやることの出来ぬこの俺を許してくれ」

と泣くから。
私は余計に泣けてくるのです。

心だけ。
貴方に「総て」捧げられるものは、それしかないから。





髪を綺麗に結い上げて、赤い赤い紅差して。
貴方を思いながら、わたしは今日も違う男に抱かれるのです。




















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ぎりぎりセーフでしょうか。(何が/笑)

ええとこれはゼミで「心中天網島」というビデオを見たんですよ。
それをモチーフと言うか、まんまパクリと言うか…。
そんな感じの、遊郭ネタです。
結構セリフとか参考にしてます。(笑)

映画は凄い生々しいんですよ。
生臭くて、人間臭くて、(精神的に)グロくて。
しかも往生際が悪い。

でも結構好きな映画でした。
気恥ずかしいところが多々あるけどね!(笑)



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