水の中によく似た、白い空間で。





「 in the white water tank 」





静かに世界を濡らしていく雨が、アスファルトを濃い色に変えていく。
わたしはそれを何の感慨も無く教室の窓から見ていた。
夕闇が近づいた教室は、わたし以外誰もいない。
人工的な蛍光灯の光が机を照らして、その空間はとても無機質に思えた。
休み時間の喧騒や、授業中の緊張感が嘘の様。
ズルズルと崩れるように床に座り込んで、目を閉じる。

小さな音を立てて降りつづける雨。
瞼の裏に透ける蛍光灯の光。
誰の息遣いも感じない空気。
脳裏に浮かぶ、弾ける雨の粒。

まるで世界から切り取られたような感覚に陥る。
けれどそれはけして、不快なものではなくて。
ああ、もしかしたら、胎内ってこんな感じなのかもしれない。

何気なく吐いた溜息は、たった1人の教室で意外と大きく反響した。
気のせいか、雨の音が酷くなった気がする。
けれどそれも今はどうでもいい。

浮かび上がる泡のような、取り止めの無い思考に身を任せる。
学校の事、友達の事、家のこと、勉強のこと。
関連性の無いそれが、次々と浮かんでは消えていく。
それは生まれては消え、消えては生まれて。

静かに吐き出した息と一緒に、何処かで緊張していた体の力も抜ける。
特に不満も無く、学生として過ごす日々。
知らないうちに疲れていたようで、ウトウトと睡魔がわたしを襲い出した。
逆らい難い力で、意識がブラックアウトしようとする――――その直前。
ポケットの中で、ケータイが自己主張を始めた。
小刻みに震えるそれを開けば、見慣れたメールアドレスの文字。
他愛のない話題に、浮かび上がるように笑みが零れる。





ああ、こうして貴方はいつもわたしを容易くこの世界に引き止める。
水底に沈む、小石を拾い上げる様に。




















=============================================================================

以前公開していたもののリメイク。
読み直すと激しく痛くて悶絶しました。(笑)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送